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第9話

皆様こんにちは。くまくま、だ。


 僕の目の前で、ミケさんは女の人にすがりついて、ワンワンと大泣きしていた。

「心配したですにゃ。もう帰ってこないんじゃないかと思って心が潰れそうでしたにゃ。会えて良かったですにゃ」

 聞き取れたのはそこまでで、あとはひたすら泣くばかりだ。女の人、僕が何度か会ったことがあるお姉さんは、ミケさんの背中を優しくなでている。しばらくして泣き止んだミケさんは、お姉さんにこう言い放った。

「帰りましょうにゃ! 一緒に帰るですにゃ!! さあ、今すぐ!!!」

「ミケちゃん。とりあえずこれでも飲んで、ちょっと落ち着いて」

 ミケさんは目の前に出されたドリンクを確かめもせずに飲み干した。あれ、あのドリンクってまさか。

「飲みましたにゃ。さあ、帰るです・・・にゃ・・・・」

 ミケさんの目がトロンとしたものになり、テーブルに突っ伏してしまった。

「今すぐ・・・にゃ・・」

「ごめんね、あと少しだけ、もう少しだけ」

 あ、やっぱりマタタビドリンクだ。

「ごめんなさいね、見苦しいものを見せてしまって。くまくまさんもこちらに来ません?」

 テーブルについた僕の目の前にも飲み物が、マタタビドリングが置かれた。・・これ、飲んでも大丈夫かな?

「大丈夫よ、くまくまさんには効かないわ。多分」

 多分、なんだ。僕は迷いに迷ったあげく、水のグラスに手を伸ばした。

「あの、帰らなくて大丈夫なんですか?」

「くまくまさん、このカフェがどんなところか知ってる?」

 えっと、それは、確か悩みごとがある人が来る、っていう。

「そう。多すぎてね、考えなきゃいけないことが。私の限界を軽く超えてるから、ここに来ることが増えてきたの」

 お姉さんはミケさんをそっとなでる。ミケさんは、まだ「帰るですにゃ」ともらしている。

「それでも最初はちゃんと帰っていたの。でも、最近はずっとここにいて」

 それで、ミケさんが探しにきたんですね。僕なんかに協力を頼んでまで。そうね、とお姉さんが頷く。

「心配してくれる人がいるって、いいわね。まあ、ミケちゃんは人じゃないけど」

「そうですね」

 平凡な相槌をうちならが、僕は思った。そんな存在のミケさんが帰ろうって言っても、とっさに帰りたくないと思ってしまうほどの悩みって一体、何だろうと。

「でも、とりあえず今日は帰るわ。ごめんなさい、くまくまさん。いえ、ありがとうかしら。ミケちゃんを助けてくれてありがとう」

 いえ、僕はお礼をいわれるほどのことはしてないです。

「じゃあ、またいつか」

 眠ってしまったらしいミケさんを腕に抱き、お姉さんは席を立った。僕は思わず呼び止めてしまった。

「あの、お姉さんの悩みって、いったい」

「・・・大したことじゃないのよ、そう、大したことじゃ」

 それは違うと思ったけれど、顔をみたら口にだせなかった。何も言えずにいる僕に、お姉さんは、ありがとうと言い残し、店を出て行った。

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