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第3話

皆様こんにちは。くまくま、だ。

 いや、この間は酷い目にあった。目を開けたら、そこは競馬場だなんて、世のヌイグルミは絶対嫌がると思う。100人に聞いたら、1000人は同意してくれると思う。え、単位とゼロの数がおかしくないかって? いいんだよ、強調しただけなんだから。

 さて、最近ぐうたら度がうなぎ登りのヌシさんに、この間の歌について聞いてみた。

「ねえヌシさん、この前歌っていたのに続きってあるの?」

『この前? 続き? なんのこと?』

「ほら、馬がどうとか、子豚のしっぽがどうとか」

『ああ、あれね』

 2番までだと思うけどという返事に、僕は突っ込んだ。

『猫がどうとかってのもなかった?』

「それは私が勝手につくったやつ」

 替え歌だったんだ、あれ。てっきり3番かと思ったよ。

「そう?」

 褒められたと思ったらしいヌシさんは、ご機嫌で歌いだした。別に褒めてはいないんだけど、まあいい。歌ってもらうのが目的だったから。

 着く場所は、きっとどこかの猫スポットか、猫カフェだろう。そう思って目を開けると、お洒落なドアが目に入った。「OPEN」と書かれたかわいい看板がかかっている。これはもう猫カフェに違いない。もしそうじゃなかったら、帰ろう。

 ドアを開けると、さっそく声をかけられた。

「いらっしゃいませにゃ。お客様、おひとりですかにゃ?」

 ……にゃ? 語尾がおかしくないか? 聞き間違えたか?

「お客様、どうかされましたかにゃ?」

 聞き間違えじゃなかった。その証拠に、目の前には、後ろ足二本でたち、カフェエプロンをつけたハチワレ猫が、いる。

「いえ、なんでもないです」

「お好きな席へどうぞにゃ」

 少し迷ったけど、僕は窓際の席を選んだ。三毛猫が水とメニューを持ってきてくれた。

「今日のお薦めは、この『まるで猫のようなパンケーキ 季節のフルーツ添え』ですにゃ。フルーツは桃ですにゃ。あ、お客様も綺麗な桃色ですにゃ」

 本当は桜色なのだけど、褒められれば悪い気はしない。素直にお礼をいっておく。

「ご注文が決まりましたら、お呼びくださいにゃ」

 メニューをめくる。お品書き(言い方が古いな…)には、ちらちらと猫の文字は入っている。そう、例えば「猫店長のきまぐれサラダ」みたいな人間のお店でもありそうなものから、「猫感激 刺身盛り合わせ」というカフェらしからぬものとか、「猫夢中 マタタビドリンク」という謎なものまである。マタタビドリンクがちょっと気になったけれど、ここは無難にお薦めメニューにすることにした。

「お待たせしましたにゃ」

 目の前に置かれたお皿の上には、猫の顔の形をしたパンケーキ2枚とたっぷりの桃。見た目はいたって普通だ。……若干、いやかなりパンケーキが厚い気がする。物は試しにナイフでちょっと押さえてみた。離した瞬間、元の厚さにもどった。今度はもっと強く押さえてみた。これだけ強く押さえたら元には戻らないだろう。そう思ったのに、ナイフをどかしたら、あっさりと元に戻った。

(まるでスポンジみたいだな。味、大丈夫かな)

 一口大にパンケーキを切り、おそるおそる口に運ぶ。口に入れた瞬間、おいしくないんじゃという思いは雲散霧消した。

(お、おいしい! おいしすぎる!!)

 ふわふわで、噛んでいるうちに甘みがひろがり、溶けるようになくなっていく。ほのかに桃の風味がする。箸が、いやナイフとフォークが止まらない。

 食べ終わったころに、三毛猫さんが水をつぎにきてくれた。

「どうでしたかにゃ? 実はパンケーキは、二つ折りにしても折れないのですにゃ。お気づきになりましたかにゃ?」

 あの厚いパンケーキが? それは気づかなかったに……危ない、僕まで「にゃ」と言いそうになった。でも、とても美味しくて、また食べたいってことはちゃんと伝えた。

 さてそろそろ帰ろうとレジに向かうと、そこには見覚えがある人がいた。記憶の糸を辿る。答えがでる前に、相手が気づいた。

「あら、確かくまくまさん。お久しぶりね」

 あ、熱田神宮で一緒に参拝したお姉さんだ。お久しぶりです。

「くまくまさんも、このお店によく来るの? そう、初めてなのね。私はよく来るのよ」

 じゃあ、ここに来れば、あなたに会えるかしれないんだ。

「そうね、楽しみにしているわ」

 そう言ってお姉さんはお店を出て行った。

 お会計を済ませると、トラ猫さんからカードを渡された。

「そのカードのスタンプがいっぱいになったら、お店からのプレゼントがありますにゃ。ぜひためてくださいにゃ」

 プレゼント? なにが貰えるのと聞いたら、こう返ってきた。それは秘密ですのにゃと。

 
 
 

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